当初は映画『ブラックレイン』の松田優作をイメージして作られた山崎。
「全身黒ずくめの日本人空手家」らしいデザインが出来上がった時は地味という事で半分諦めかけられたが、利き手をポケットに入れる設定ができてからは、期待され始めた。
その利き手はいざという時の為に温存している、危ないネーミングの個性的な技の数々、といった設定も次々に生まれて行き、完成した時には当初のイメージからはかなりずれていたという話だ。

 山崎は、餓狼の中では数少ない孤独の人で、守るべき人物や背負う物は何もない。
理性はあるけど欲のままに生き、暴力に依存しながら、常に何かしらの利益を求めている。
そんな彼からすると、誇りや名誉の為に拳を振るうギースやテリーは馬鹿馬鹿しくもあり、目障りだが、非常に興味深い人間でもある。
しかし歪みつつも反町という男から「非常世界を生き抜く戦い」を教え込まれ、またそうやって生きてきた事に対して誇りを持ち、彼なりのこだわりが込められているというのは、ポケットで隠された左手と匕首から窺えるのかもしれない。

 秦兄弟と一蓮托生して秦の秘伝書事件の黒幕として動くのが、初登場の餓狼3で、お互いに利用し合いながら、目的の物を得たら相方を切り捨てるつもりでいたのに間違いはない。
そもそも山崎は仲間を作らないし、どこにも属さないのである。
餓狼3以降の秦兄弟との関係はよく分からず、RBSPの時点で崇秀の山崎の対する勝ち台詞に、裏切れば殺すといったのがある。
これは当時にまだ山崎と秦兄弟がつるんでいた事を暗示しているかもしれないが、秘伝書事件は既に幕を閉じ、RBではギースがそれを処分しているので、一体どういった理由でつるんでいるのかは分からない。
RBSPでは何やら全員台詞等がおかしくなっているので、口調が定まってない崇秀の気の迷いという事にしておくのもいい。
未だ先祖の霊に取り付かれ、力を失ってはいない秦兄弟を更に利用しようと、秘伝書事件以外で手を組んでいた可能性も無きにしも非ずだが、この時の秦兄弟は非常に不安定で、人格が子供に戻ってしまったりまた乗っ取られたりと面倒な事になっているから、そんな相手と組むつもりはないだろう。
全く関係ない話だが、ネオジオバトルコロシアムで秦兄弟は健在という事が確認できたので、KOFでは是非とも餓狼3ボス三人衆で香港悪役チームを組んでもらいたいものだ。
香港悪役チームとは言ったが、別にチン・シンザンの事は忘れていない。

 餓狼では山崎と言って欠かせないのが、香港警察の紅き虎、ホンフゥである。
世間から忘れられているようだが、餓狼3では、山崎一筋で捜査を進め、香港からサウスタウンまで山崎の逮捕の為に渡ってくるといった根性を見せ付けてくれた。
ホンフゥ視点では山崎が一番自分と関わりのある人物となっているだろう。
山崎とホンフゥの関係は、ルパンと銭型のようなお笑い混じった関係なのかと言うと、そうではない。
ためらう事なく山崎がホンフゥをのしている事から、それよりは殺伐とした関係である事が窺えるが、基本的に山崎はホンフゥに遭遇しない限りは彼から逃げる方向でいる。
障害物は全て叩き潰すはずの山崎が、なぜ殺そうとしないのか。
二人の口ぶりだと、何年来か追いかけっこの付き合いがあるようであるが、これに絆されるという事は非情な山崎にあり得ない話だ。
もしかしたら、警察関係者とはあまりトラブルを起こしたくないのかもしれない。
元日本ヤクザの名残としてそれが考えられる。
ヤクザと警察は共存し、付かず離れずの関係にいなければならないのは、山崎も目前で見て来たはずだ。
そうでなければ、ホンフゥが怖い程打たれ強い、生命力がゴキブリ以上である、毎回途中で誰かが邪魔をしてくる強運の持ち主、ヌンチャクが本体でホンフゥの方は人形、といった説くらいしか聞かない。
ちなみに彼はカプコンの春麗より立場は下である。

 KOF97からビジネスの一環としてKOFに出場し始める。
チームメイトはエージェントのブルー・マリーとハワードコネクションのビリー・カーン。
人気投票でこのチームを決めたようだが、マリーの次位らしかったダック・キングは惜しい男である。
三人の仲はどうであろう。
山崎とビリーはどう考えても馬が合いそうになく、仲は険悪であろうが、餓狼ならお互い本気で目くじらは立てず、仕事と割り切ってお互いあまり関与し合わなさそうだが、KOFではどちらも結構大人気ない。
マリーはマリーで、餓狼時代特有の頭が切れるセクシーな女の印象も、時を重ねるごとに薄れてしまった感があるのではないだろうか。
だが、KOFではこのチームで一番大人なのがマリーだろう。
もっとも彼女が大人なのではなく、他二人が子供っぽくなってしまっているだけだが。
山崎とビリーが一戦交えた後に、二人揃ってマリーに会いに行く場面があるので、馬の合わない三人でもつるむ時はつるむようである。
この時山崎はマリーを始めて見たかのような反応を見せているが、KOFは餓狼とは別世界、すなわちパラレルワールドらしいので、あまり気にする必要はない。

 KOFでは面白おかしな暴力狂人にされてしまった山崎だが、本来の彼は狡猾かつ冷静で、意外と紳士だ。
寡黙ではないが、少なくともKOFのように意味もなく喚き散らさないし、普段静かな分、時折見せる狂気がとても印象的で、渋い男であった。
タガが外れてしまった時以外は馬鹿笑いしない。喉を鳴らして、または鼻で軽く笑う。
KOF2003ではギースに雇われてあんな会話をしている辺り、どうやらビリーと同格の扱いになっているようだが、本来ならば組織自体の規模はハワードコネクションに敵わずとも、個人としてはどちらかというとギースに近いはず。
サウスタウン制覇がどれ程の偉業なのかは、はっきり分からないが、九龍城のトップを取った男であり、香港の裏社会を牛耳っているのだからそれなりの勢力だろう。
オロチ八傑集というのは、ご存知、人数合わせの為の後付設定。 蛇使いという名前の繋がりでこんな事になってしまい、今後暴走する可能性があるようだが、あれ以上どう暴走すると言うのか。 八神庵やレオナのようになってしまうのか、それとも反動で昔のように戻ってくれるのか。
後者の可能性はゼロに近い。






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